職人インタビュー

仏教を主宗教とする日本において寺院や仏壇に飾られる敷物である”打敷”。そんな打敷を三代にわたって専門に作り続ける職人、百武弓弦氏にお話をうかがいました。

ーー打敷とはなんでしょうか

今の若い子は知らない人が多いと思いますが、家庭や寺院の仏壇を飾る装飾品の一種です。その形はさまざまで、逆三角のものや四角形のもの、宗紋や家紋があしらわれているものなど、家や宗派によって変わってきます。また打敷は常に飾っているわけではありません。基本はお正月、お彼岸、お盆、法事のようなあらたまった場に用いるとされています。

ーー打敷へのこだわりを教えてください

今打敷を手作業で作っているところは非常に少なくなっています。全て職人が手で刺繍を施しますから、機械で織られたものとは風合いが違う点でしょうか。後は”人”の顔です。人間は顔を認識する能力に特化していますので、目鼻の位置や高さを変えるだけでまったく違う印象になり、違和感を覚えてしまう。

そのため人の顔を刺繍するのは、とても気を遣う部分なんです。うちで抱えている職人の中でも、顔を美しく刺繍できるのは2人だけです。お客様の中にはうちの天人様の顔が素敵だといって購入していただくこともあります。

ーー打敷は職人が全て一人で仕上げるのでしょうか

昔は「龍をひたすら縫う人」「人物だけを縫う人」といった具合に、場所によって専門の職人がいました。得意な作業だけをしていたほうが、全体としても効率が良いですから。しかし現在では、残念なことに仕事が減っていることもあり、一人でどんな柄でも仕上げられるようにならなければ仕事が回りません。そのため一人で仕上げる場合が多いですね。

ーー打敷以外で何か刺繍されることはありますか

お祭りの山車(だし)にかける幕の装飾も手掛けています。愛知県は日本でも一番山車のお祭りが多いといわれていますから、そうした仕事も多いですね。また打敷や山車の幕などは、修復することで長年使えますから、修復や復元も私のところで承っています。後は刺繍の技術を活かして、絵画のような美術品を作っていますね。まだまだ試作段階なので、どういった作品を作ろうか日々模索しているところです。

ーー打敷需要は減っていると感じますか

そうですね。近年では仏壇どころか仏間さえない家が増えています。そうすると当然仏具の需要も減ってきますよね。また日本という国自体、もともと宗教に熱心な国柄ではないですから。お寺も住職の代が変われば考えも変わっていきます。家庭では大きな仏壇をこさえる人もさらに少なくなっていくでしょう。私たちも柔軟に対応していかなくてはなりませんね。

ーー職人になりたいという若者が現れた場合、技術を習うことはできますか

もちろん職人になりたいという方でしたら、国籍性別問わず大丈夫ですよ。体験教室などはやってはいませんが、本気で職人を目指すという方でしたら大歓迎です。ただし、人にもよりますが最低でも3~5年はグッと耐えて技術を習得する期間が必要になります。製品としてお客様に出しますので、中途半場なものを提供するわけにはいきません。その覚悟はしてもらわないといけません。

ーー職人Timesをご覧の皆様へ、メッセージをお願いします

まずは昔から伝わる日本刺繍を知ってほしいと思っています。大量生産された品と、手仕事で職人が作った品の”違い”と”価値”を分かってくれたら嬉しいです。私も普段から刺繍に限らず美術館などで美しいものを見て勉強しています。ぜひ本物の良さを感じてください。

プロフィール

百武弓弦 -HYAKUTAKE YUZURU-

三代にわたって続く百武打敷店の現場監督として、何人もの職人をまとめ上げる。日本文化の普及にも意欲的に活動中。

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