職人インタビュー

九州熊本に工房をかまえる、木工作家の甲斐武さん。甲斐さんの作品には、余計な装飾や彫刻がなく、シンプルで、木の個性や力強さを感じることができる。またその形も、決して古臭いデザインではなく、どこかアートを感じさせるような、独特の美的センスが感じられる。そんな甲斐さんのモノづくりにかける思いを、聞かせていただきました。

 

ーーモノづくりの道へ入ったきっかけを教えてください

元々をお話すると、小さなころから図工が大好きだったんですが、木工作家になることは考えていませんでした。高校を卒業したら地元を出て、東京でジャズのミュージシャンになろうと思っていたので。だから大学在学中は、バンド活動ばっかりやっていましたね(笑)。

 

ーーミュージシャンとはびっくりです!でもなぜ、そこから木工作家へ転身されたんですか?

当時自分が愛用していたのがウッドベースだったこともあって、知らぬ間に、木という素材には非常に親近感が湧くようになっていたんです。そして大学卒業後は、現実的なところで普通のサラリーマンとなって、25歳のときに結婚しました。私が木工を本格的にやりだしたのは、ちょうどこの頃なんです。図工は好きでしたし、木も大好きになっていたので、素人ながらに自分で欲しいものを作るようになって、だんだん作品を作っていくうちに、この道で生きていくのも面白いなと思って、本格的に職人を目指すようになっていきました。

 

ーーすると、最初は素人同然だったわけですよね?

そうですね。当然、最初は日曜大工レベルでしたね。だから30歳頃に地元熊本へ帰り、職業訓練校で木工の基礎を身につけることにしたんです。それから、他の木工作家のもとを訪ねては、見聞きしながら、ときにはアドバイスを頂きながら、技を習得していきました。そうしていくと、益々この道にのめり込んでいって、現在に至るといった感じです。

 

ーーそうしてこの道30年以上、誰にでも真似できることではないと思います。甲斐さんの作品はシンプルだけど力強い、それでいて古くないモダンな印象を受けました。作品づくりにおいて、気をつけていることはありますか?

人が欲しいなと思う形を考えるようにはしています。あと年も年ですので、思考も保守的にならないようには注意しています。あとは、もうひと手間を惜しまないように。この辺でいいか、と妥協するんじゃなくて、少しでもこうしたほうがいいと感じたら、徹底的にやる。お客さんには常に全力で応えたいんです。

 

ーー手間を惜しまない仕事、甲斐さんの作品を見ているとそれが伝わってくるように思います。そうしたこだわりは、材料選びにも?

材料もやはり選びますね。使いやすい材料だったり、器に合わせた木材が必要ですから。また材木屋さんを回るのも、楽しみの一つなんです。材木を眺めながら、これはテーブルにしたら良さそうだなとか、器にぴったりだなとか、考えるのも好きなので。また同じ木でも、表情が違うので、面白い木目を見つけると、つい衝動買いしてしまうこともありますね(笑)。

 

ーー甲斐さんの木工好きが伝わってきます!そうして、今まで多くの作品を作ってこられたと思いますが、印象的な思い出はありますか?

そうですね。私が個展をやりだして間もない頃に、ふらっと工房に訪れた男性が「これとこれとこれとこれ」といった具合に作品を選び、たくさんの作品を一度に買っていかれたんです。他県の方だったんですが、それから仲良くお付き合いさせていただくようになったんです。

そしてある時、その方から「退職するから、記念に栃の木で机を作ってくれ」と言ってくださって。これには私も「最高の作品を作ろう!」と思って、岐阜の有名な材木屋さんまで、その人と一緒に行って材木を選ぶなど、材料からトコトンこだわりました。またその木材を乾燥させるのに3年かかり、デザインや加工で2年かけて仕上げていきました。注文から完成まで、5年の月日が流れて、いよいよ納品。すると本当に喜んでくれて。とても嬉しかったですね。またこの文机が公募展にも入賞して、私にとっても忘れられない思い出になりました。

 

ーー作品完成までの長い道のりも大変さも伝わってきましたが、お客さんと作り手の垣根を越えた、お二人の素晴らしい関係性にも、感動しました!

やっぱり、お客さんに喜んでもらうことが一番嬉しいですからね。私の作品は、決して安いものではありませんが、損をしたと思わせない、買ってよかったと思っていただけるような作品を創っていきたいと思います。

 

 

ーーでは最後に職人Timesをご覧の皆様へメッセージをお願いします

一人の手作業ですので、非常に手間と時間はかかります。また材料も自分の目で厳選したものを使っているため、決して作品も安くありません。それでも、毎日使ってもらえるように、皆さんの暮らしを豊かにできるように、これからも色々な作品を発表していくことができたらと思います。また年齢に負けないよう、新しく自由な発想でモノづくりができるように、努力していきます。

 

甲斐武 -KAI TAKESHI-

1955年、熊本県熊本市生まれ。 東京でプロのジャズミュージシャンを目指すも、挫折。昔から親しみ続けてきた木という素材に惹かれ、木工の世界へ。職業訓練校で木工の基礎を身につけ、他の木工家のもとを訪ねては見聞きしながら技を習得。日本工芸会正会員。

経歴

1995年 西部工芸展初入選(その後入選6回)
1997年 日本伝統工芸展 初入選(その後入選5回)
1999年 熊本県伝統工芸館にて個展(その後毎年開催)
2001年 朝日現代クラフト展 招待出品
2007年 新宿京王百貨店 二人展・広島 花独楽 個展
2009年 九州国立博物館 九州沖縄の作家たち展
2011年 くまもと阪神百貨店 個展・ギャラリーつる田 個展
2012年 京都 ぐれごりお 個展・島田美術館 個展
2013年 東京 ギャラリーおかりや 二人展 他

 

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