職人インタビュー

若くして自身のブランドを立ち上げた、革小物作家の田中美緒さん。自由な発想で、自分が本当に欲しいと思うものを、気ままに形にしていく。そんなシンプルな考えから生まれた彼女の作品たちには、女性だけではなく、男性をも夢中にさせる魅力がある。その魅力は一体なんなのか、それを探るべく、田中さんにものづくりにかける思いをうかがってきました。

 

ーーモノづくりの道へ入ったきっかけを教えてください

まず根本の話からすると、家が少々特殊でして、モノづくりをするにあたり、最適な家庭環境に育ちました。というのも、5年前に亡くなった父がすごくモノづくりに長けている人で、電気工事もするし農業もするし家までも作るような人でした。なので、実家には工房があり、常に何かを作っている父の背中を見て育ちました。工場でも無い一般家庭に万力があるのは珍しいのではないでしょうか(笑)。

 

ーー凄いお父さんですね!普通のサラリーマンだったんですよね?

そうですねぇ。だからモノを買うという事が少なかったんですよ。「欲しかったら作る」「作るための道具がなければ、道具も作る」という人だったので。だから、私自身もその精神が当たり前になっていったんです。おかげで、幼少期から図画工作や絵は得意でしたし、高校からプロダクトデザインや芸術の勉強をする学校に行っていました。この頃は革小物という意識はありませんでしたが、モノづくりの職に就くのだろうとは、漠然と考えていましたね。

 

ーーそこから革小物を作るようになったのはなぜでしょうか?

高校卒業後は、デザインの専門学校に進んで、さらに2年間勉強していました。その後、アクセサリーの会社に就職が決まり、グラフィックデザインやディスプレイ、カメラなど担当している中で、自分でも趣味でビーズやチェーンを使ったアクセサリーを作るようになっていったんです。当時は、まだ今ほどWEBショップが主流ではなかったように思いますが、HTMLなど勉強しながら、つたないWEBショップを立ち上げました。これがMINUITの原型です。

またこの頃、会社でカメラを担当していたこともあり、自分自身もカメラにどハマリしまして…。ふと、カメラストラップもお洒落にしようと思い、ストラップを探していると、どこかおじさんぽい物が多く、好みの物を見つけれなかったので「自分で作ってみよう」となったわけです。これが一番最初に作った革製品になります。この自作のストラップを当時のブログにアップしたところ、ありがたいことに「欲しい!」という声が殺到したんです。それから徐々に、ファッション感覚でカメラを斜めがけする若い方たちが増え、カメラブームも相まって、運が良く波に乗りました。あれから10年、右往左往もしましたが、独学で現在に至ります。

 

ーー最初は革小物だけではなかったんですね。しかし、独学というのも驚きました!

どう縫われているのかなど、基礎的な勉強は必要ですが、後は自分の頭の中にあるものを形にしていくだけなので、大変だと感じることはなかったです。そうしたところも、やはり父の影響が大きかったのだと思います。父はよく「道具がなければ作れ」言っていましたが、まだ私はそこまでの域には達していません(笑)。 でも、ネジを研磨して作ったカシメを打つ棒、目打ち、焼印のコテを置く台など、父が生前私のために作ってくれた道具たちが工房にはたくさんあります。これらは今も大事に使っています。

 

ーーモノづくりの精神が、しっかりと田中さんにも受け継がれているという印象を受けます。そんなMINUITのコンセプトやこだわりを教えていただけますか?

「私が作る物たちが、わくわくする1日の始まりのお手伝いができますように」という願いをロゴマークに込めています。そして、こだわりを持たないのも一つのこだわりだと考えているんです。視野を広く、自由きままなノラネコみたいに、私が欲しいと感じたり、ふとした思いつきや、きまぐれから成り立っています。

もちろん描き下ろしたイラストであったり、一点物のパーツであったり、作品毎にポイントとしている場所はさまざまですが、そこを見て欲しいというのではなく、手に取ってくださった方が、気に入ってくれたポイントが、その作品のポイントなんだと思います。

 

ーー自分の”好き”を追求したシンプルな考えから生まれているからこそ、多くの人を魅了しているのかもしれませんね

どうなんでしょうか(笑)。でも私のお客様たちは、ありがたいことにとてもリピーターさんが多いです。宣伝能力が皆無ですから、MINUITはリピーターさんに支えられていると言っても過言ではありません。お名前を覚えてしまうほどに、何度もリピートしてくださるお客様はやはり印象に残ります。何度も買ってくださることで、この方はこの色がとってもお好きなんだなとか、こういう趣味の方なんだな?とわかりますし、この色好きそう!と感じたら、私からご提案させていただいて、その方のためだけにお作りしたりもします。

 

ーーでは最後に職人Timesをご覧の皆様へメッセージをお願いします

なにか異素材と革のコラボレーションだったり、イラストを描いたり、無限に広がる創作意欲がある限り、この仕事を続けていきたいと思っています。一人なので、歩みは遅いですしまだまだ未熟者ではありますが、これからもどんどん発信していきたいと思いますので、今後とも見守ってくださったら幸いです。

 

プロフィール

田中美緒 -TANAKA MIO-

「無ければ作る」、そんなモノづくりが大好きだった父の影響を受け、高校ではプロダクトデザインや芸術の勉強を経て、デザインの専門学校へ進学。その後アクセサリーの会社に勤め、自分でもアクセサリーを作るようになり、MINUITを立ち上げる。自由な発想で、本当に欲しいものを形にする、注目の若手女性作家。