職人インタビュー

愛知県常滑市で生産される伝統工芸品”常滑焼”。愛知県を代表するやきものの町としても有名な常滑の地で、若くして自身の工房を創業した常滑焼作家、渡辺敏史氏にお話をおうかがいしました。

 

ーー常滑焼の陶芸家を目指したきっかけを教えてください

父が常滑焼の陶芸家だったこともあり、幼少の頃から陶芸に触れる機会は多かったので、自然にそうした気持ちが芽生えました。小さい頃は工房をうろちょろして父によく怒られました(笑)。本格的に陶芸家を目指し、高校卒業後に愛知県瀬戸市にある”赤津焼”を作っている霞仙陶苑に入社しました。そこで陶芸のイロハを3年間勉強させていただきました。

 

ーーあえて実家ではない別の窯元へ行かれたワケはあったのでしょうか

家を出て見えてくるものもあるでしょうし、霞仙陶苑の陶器が美しかったからという理由もあります。3年間の修業を終えた後は、実家でも2年間修業をしました。やっぱり窯元によって手法や使う土も微妙に変わってくるので、とてもいい経験だったと思います。霞仙陶苑とは今でもお付き合いがあり、すごく良くしてもらっています。

ーー若くして自身の店を持つことに不安はありませんでしたか

不安が0だったというわけではありませんが、物作りが好きでしたので。ここでは自分が創った作品を並べています。だからお客様が手にとって買っていただける瞬間を間近で見ることができます。これがとても嬉しいです。お客さんから「使ってみたけど、良かったよ!」なんて声をいただけるのも嬉しいです。だから不安より楽しみのほうが大きかったと思います。

 

ーー渡辺さんが創る常滑焼の特長を教えてください

常滑焼の特長は鉄分を多く含んだ、常滑の土を使用しているところにあります。焼くと鉄分が熱に反応して、美しい朱色を表現するんです。僕のところでは常滑の土はもちろんですが、それだけではなくて、厳選したさまざまな土を配合して表現の幅を広げています。

“ギャラリー敏”の床にはどこか懐かしい瓦がいっぱい

ーー陶芸の魅力、面白さはどんなところでしょうか

予想もつかない結果を生むところでしょうか。さまざまな種類の土を配合したり、焼く時間を変えたりするだけで、仕上がりはまったく違うものになります。ある程度の予想はできますが、それが自分の理想と適合するかは窯を開けてみるまでわかりません。

だから焼きあがると「この土を混ぜるとこの色が生まれるんだな」とか「この色にするためには、この土とあの土を配合するといいのかも」など新しい発見でいっぱいなんです。技法や材料などの組み合わせは無限にあるので、それは教科書にも載っていないことだし、誰かが知っているわけでもありません。自分が納得するまで試行錯誤の連続、これが面白さであり魅力でしょうか。

 

ーー今後挑戦していきたいことはありますか

常滑焼の職人も減ってきていますので、まずは陶芸をやりたいと思ってもらえる環境を作っていきたいです。そのための陶芸教室もやっています。また個人的に感じていることとして、常滑焼職人は技術が非常に優れている人が多いということ。急須もそうですが、とても繊細な物を作ることに秀でています。その”凄さ”や”魅力”をもっともっと伝えていきたいですね。

 

ーー職人 Times をご覧の皆様へメッセージをお願いします

伝統は大切にしながらも、そのままではいけないと思います。常に変わっていくことも、伝統を守るという意味で必要です。「ギャラリー敏」ではろくろ体験も出来ますので、ぜひ自分の手で作ってみて、常滑焼の奥深さと面白さを感じてみてください。

 

プロフィール

渡辺敏史 -WATANABE TOSHIFUMI-

20代で自身の工房「ギャラリー敏」を創業した常滑焼陶芸家。常滑焼を通じてお客様との交流を大切にし、新しい挑戦をし続ける若き職人。