職人インタビュー

日本男子の第一礼装である黒紋付羽織袴の伝統工芸”名古屋黒紋付染”。その古くから伝わる染色技法を活かして新しい価値を生み出す伝統工芸士、武田和也氏にお話をうかがいました。

 

ーー名古屋黒紋付の職人を目指したきっかけを教えてください

私は大学を卒業した22歳から名古屋黒紋付染の仕事を始めました。親父がもともと職人だったものですから、家業を継いだということですね。職人の家で生まれ育ったものですから、ずっと家業を継ぐ覚悟はできていました。祖父が武田染工を創業して祖父から父へ、父から私へ受け継いできましたので、私で3代目になります。ただ武田染工という屋号は親父の代からなんですけどね。

 

ーー黒紋付といえば家紋ですが、デザインはどれくらいあるのでしょうか

紋帳と呼ばれる家紋を集めた教科書があるのですが、これに掲載されているものだけでも数千種類あります。また家紋のデザインにルールはありませんから、自分でデザインした紋を家紋とすることもできます。そういう意味では種類は無限ですね。もともとは千年以上前の平安時代、苗字と同じような感覚で己を証明するために家紋は使用されていました。いつしか庶民でも家紋を使うようになり、お洒落の一部としてさまざまなデザインが考案され始めたと言われています。

紋帳の一部

ーー仕事へのこだわり、難しさを教えてください

黒紋付染はもちろんですが、さまざまな着物を染色します。いわゆる無地着物ですね。そこで重要なのはお客様のイメージする色に仕上げることなんです。ただ染めればいいというわけではなく、一口に黒と言っても濃淡によって印象は大きく変わりますし、ムラなく仕上げるには確かな技術が必要になります。

染料の調合から、染液に浸す時間など常に状態を確認しながら染色していきます。特に無地着物は腕の見せ所で、単色で柄がないために少しのムラでも目立ちますから、ごまかしは通用しません。そうしてお客様から「いい色ですね」と褒められたときは最高に嬉しいですね。仕上がりの良し悪しを決めるのは私ではなくお客様ですから。

 

ーー普段から着物はよく着られますか

仕事をしている時は着ませんが、もちろん着ますよ。普段でも着物で出かけたりすることはあります。最近は着物といってもその種類はさまざまです。絹で出来たものだけではなく、ポリエステルや木綿などのカジュアルな着物が流行っていますね。着物愛好家が集まる「キモノジャック」というイベントもありますし、若い人にももっと着物を楽しんでほしいと思います。

ムラなく染めるため、渦巻状にされた布

ーー伝統工芸の後継者不足について、ご意見をお聞かせください

そうですね…。同業者も廃業という道を選択した方も多いです。需要の減少、つまり若い人の関心が薄いことが原因となっていると思います。そのため「着物」「家紋」「染色師」をいかに魅力的に見せるか、といったところが課題でもあります。そのために私も「若い人が普段使いできる物」に重きを置いて、着物に合わせられるお手頃な小物(ストール)も作っています。

市場には大量生産品が溢れていますが、私たち職人が手掛けた品を見たり触ったりしてもらって「やっぱりこっちの方がいいな」と思っていただけたら嬉しいですね。今後も着物という基礎となる部分は守りながら、新たなチャレンジをしていきたいと思います。

 

ーー職人Timesをご覧の皆様へ、メッセージをお願いします

黒紋付染の着物、羽織袴は喜びの席や悲しみの席で第一礼装として用いられます。主賓者の失礼にあたらないように、また着る人が恥ずかしい想いをしないように、小ロットから思いを込めて仕上げています。使えば使うほど味を出し、その家で何代も受け継いで着ていただける染色を心がけて、これからも伝統の技を守っていきます。

 

プロフィール

武田和也 -TAKEDA KAZUYA-

職人歴20年以上、名古屋黒紋付染の伝統工芸士。着る人の気持ちを考え、お客様の理想の色を追い求める。

 

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