職人インタビュー

黒釉やトチ渋を使い、自然のよさを活かした作品を手掛ける陶芸家の松尾剛さん。松尾さんからは、陶芸のテーマについてや、ものづくりをする上でのこだわりなど、お話をうかがいました。

ーー陶芸家を目指すようになった経緯を教えてください

私立の中学校、高等学校で9年間美術の教員を務めました。生徒や保護者、同僚と夢を語り努力する素晴らしい日々でした。学級担任としての3年目を過ごしていたある日、ふと自分自身がどう人生を全うするのか、自分の特性を最大限活かす道は何なのかと考えたのです。

また、私は学級担任を受け持つ前は日本画を描いていました。日本画は自然の土や砂、岩、貝殻などを絵の具として描く表現分野です。それらのことを踏まえ、自然の素材を用い自らの手をもって物作りすることを考えると、陶芸という選択は自然でした。

ーー陶芸家になろうと決めてからは、どのように技術を覚えたのでしょうか

教職を辞めてからは愛知県瀬戸市にある職業訓練校に1年間通い、菊練りと呼ばれる陶土をこねる技術や、ろくろやたたら作りで湯のみを製作したりと、基本的な技術を覚えていきました。卒業間近になると壺のような大きめの作品も練習するようになり、卒業後は美濃焼の瑞浪市に居を移し、製作を続けています。

私は陶芸の師匠と呼べる方がいないので、美術館の作品や陶片、粘土屋さん、絵の具屋さんなどから技術を学んでいます。そういう意味では瀬戸、美濃の土地が先生といえるでしょうか。

ーー松尾さんはアジア諸国を旅された経験をお持ちのようですが、その時の経験が陶芸に影響を及ぼしたりすることがあるのでしょうか

そうですね。ベトナム北部で生産された安南焼(あんなんやき)のふわっとした呉須絵や、カンボジアのクメール陶器の動物をかたどった小壺、タイの宋胡録(すんころく)の鉄絵など、東南アジアの大らかな陶磁器には親しみを感じます。今私が作っているものに影響は出さないようにしていますが、将来的にはそのエッセンスを取り入れていきたいと思っています。

ーー黒釉を使用されたりと、シックな雰囲気の作風が素敵だと感じました。陶芸のテーマのようなものはあるのでしょうか

あくまでも自然の素材から人の手で作るものという認識なので、あまり技巧的に作り込むことは避けています。素材と対話しながら器の形に落としこんだ結果が、シックな印象やシンプルな形として表れているのかもしれません。

私は絵付けの作品も手掛けているのですが、それも手をかけすぎることなく、筆の勢い、身体的な動きを大切にしています。そうした自然な雰囲気を楽しんでほしいと思っています。

ーー作品を手掛ける上で、一番こだわりを持っている部分はどのようなところでしょうか

使いやすさをまず考えます。それを踏まえて心地良い緊張感をもった線、程よく深みのある色、質感を心掛けています。器が語り過ぎて食卓の調和を乱さないように、料理や花より目立たないように気を配ります。

使い勝手は自分で使用して確認しています。実際に使ってみると、もう3ミリ太い方がいいなとか、あともうちょっと量が入ると日常使いに向いている、ということを直に感じられますので、その都度修正を加えながら作品を作っています。

ーー作品を使用される方には、どんなところを感じてほしい、見てほしいとお考えでしょうか

物を一つ置くだけで空間は一変します。料理の色、テーブルクロス、花や照明との組み合わせの変化を楽しみながら使っていただけたらと思います。

ーー今後、追及していきたい表現方法や、さらに伸ばしていきたい技法などあれば教えてください

現在製作している黒釉、貫入にトチ渋で色を付けたもの、磁器染付の技法をより勉強していきたいです。特に染付の筆づかいは奥が深くやりがいがあります。

この3つをメインの技法として続けていきつつ、ゆくゆくは陶芸教室で焼き物の楽しさを広めていきたいので、織部焼や粉引きなど様々な技法や釉薬にもチャレンジをしたいですね。

また、陶芸教室については、私自身が教職に就いていたからなのか、文化的なものを誰かと共有したいという思いがあるんです。いつか生まれ育った関東地方で陶芸教室を開きたいですね。

ーー職人Timesをご覧の皆様へ、メッセージをお願いします

土と火と人の手によって作られた器に料理を盛る。ぶつけたら欠けるし落としたら割れることもある陶磁器ですが、うまく付き合っていけば生活をとても豊かにしてくれます。少しでも興味をもっていただければ嬉しく思います。

プロフィール

松尾剛 -MATSUO TSUYOSHI-

1979年 東京都生まれ。千葉大学教育学部中学校教員養成課程美術科絵画専攻 卒業。日本美術院(日本画)院友。9年間の美術科教員を経て、2014年 愛知県立窯業高等技術専門校 製造科 卒業。2015年 「クラフトフェアまつもと」「工房からの風」出展。

HP http://tsuyoshi0724.wix.com/potter