職人インタビュー

昔から日本の家を照らし続けてきた和蝋燭。愛知県岡崎市で、受け継がれた伝統の技法と材料を用いて”本物”の和蝋燭を創り続ける職人、松井規有氏にお話をおうかがいしました。

 

ーー和蝋燭の職人を目指したきっかけを教えてください

もともと和蝋燭を作っている職人の家系ですので、そこに生まれ育った環境が大きいですね。小さい頃から和蝋燭が近くにある環境で育ったものですから、自分もいつかは職人になる覚悟があったようです。といっても、実は私は39歳まで製薬会社に勤めていた時期もありまして、それまでは二束のわらじを履いていました。会社が終わった後に家で蝋燭を作る生活でしたね。今は蝋燭一本です。

 

ーー店内は歴史を感じる道具も多いですが、お店の創業はいつでしょうか

松井本和蝋燭の創業は、明治40年になります。私で三代目になるのですが、先代である私の父の代からここの工房で仕事をしています。道具が古いのも当然でして、未だに父が使っていた道具を譲り受けて使用しているものばかりなんですよ。

昔から使われている秤(はかり)

ーー作業場を見学自由とされていますが、こうした取り組みは珍しいですよね

隠すものは何もないですし、伝統を守っていくことも使命のひとつなと考えているので、ご自由に見学してくださいというスタンスをとっています。天然由来の櫨(はぜ)の実から絞った木蝋を使用して、一本一本丹精込めて昔ながらの製法で作っています。見られて恥ずかしいものは作っていません。

 

ーー”本”和蝋燭とはいったいどんなものでしょうか

現在市場にある和蝋燭の大半は型に流し込まれて作られた蝋燭でしょう。また原材料も外国産のワックスであることも多いです。そんな中、本来の和蝋燭を皆さんに知ってもらうために”本”和蝋燭とうたっています。

“本”和蝋燭とは天然由来の櫨(はぜ)の実から絞った木蝋を100%使用し、一本一本手作業で蝋を塗っては削りを繰り返す、昔ながらの製法で作られたものです。この製法で作られたものは、炎の持続時間や揺らめきがまったく違いますし、嫌な臭いや煙もほとんど出ません。

バウムクーヘンのような年輪

ーー手作りと大量生産品の見極め方はあるのでしょうか

化学物質を使用して作った蝋燭なんかは、灯をつけてみればすぐに分かりますよ。天然由来の櫨を原料にした和蝋燭は嫌な匂いもしませんし、煙を吸い込んでも、体への害は少ない。更に言えば環境にも優しい。また手作りの品は、バウムクーヘンのような年輪が見られるはずです。一層一層職人が手で塗り重ねた証といえます。型にはめた量産品ではこのようになりません。

 

ーー和蝋燭の炎は人にどんな影響を与えるのでしょうか

一番は癒し効果だと思います。和蝋燭は無風状態でも炎が揺らぎます。大学との協同研究で洋蝋燭との比較も行いましたが、洋蝋燭の場合、無風状態で揺らぐことはありえません。小難しい話になりますが、和蝋燭の場合「11Hz」の光の変動を計測することができました。人がリラックスしたときに脳から出るα波は「8Hz~13Hz」の周波数ですから「11Hz」の周波数を出す和蝋燭は、人体にとって癒し効果があることが科学的な見地から証明されています。

 

ーー職人 Times をご覧の皆様へメッセージをお願いします

伝統の和蝋燭は、大量生産された物とはまったく違うんだということを分かってほしいです。1度でも使用してみればその違いに気がつくはずです。ぜひ私の店にも遊びに来てください。

 

プロフィール

松井規有 -MATSUI NORIAKI-

職人歴50年を超えた今でもなお、理想的な炎の揺らぎを追求するため、大学との共同研究も行ってます。もうすぐ70歳とは思えないほど若々しい溢れる職人。