加藤七宝店

煌きの奥深さと、折り重なる色彩の美しさを秘めており、古今東西、見る人の目を魅了し続けている尾張七宝。愛知県名古屋市西区にある加藤七宝店にて、製作現場に密着。

 

陶磁器とは異なる尾張七宝

尾張七宝は”七宝焼き”と呼ばれることもあり、陶磁器と勘違いされている方も多い。しかし、尾張七宝は陶土から作るものではありません。金、銀、銅などの金属製の下地に、銀線を立て、釉薬をさし、焼成、研磨を経て完成する金工品です。
※上の写真は、2013年にグッドデザイン賞を受賞した加藤さんの作品を分解したもの。ステンレス製であることが分かります。

 

尾張七宝の最たる技法

こちらは尾張七宝の最たる技法であり、伝統技法の銀線を立てる作業で、”植線”ともいわれます。純銀製の細い線で一つ一つの模様をピンセットで形作り、作品の模様を銀線で描いていきます。

3次元の立体に、この細かい銀線を立てていくことは、非常に綿密かつ繊細な手作業の連続で、とても高い技術力が求められる技法。こうした丸みを帯びた形状でも、銀線が浮いてしまうことなく、丁寧に銀線のアートを仕上げていきます。

 

職人の技を披露

これが、尾張七宝の伝統ある技です。大量生産の七宝には、こうした銀線を立てる作業を省いている所がほとんど。時には使用するピンセットも、針のような細さのものを使用することもある。満足のいく仕上がりになるまで、少なくとも10年はかかるといわれています。

 

桜の花

5枚の花びらをつなぎ合わせて、1cm程の桜模様が完成。銀線が浮いてしまわないように、桜模様も5枚の花びらを別々に加工して、それぞれをつなぎ合わせます。

 

職人道具を作る職人の影

銀線を加工する際に使用するピンセットとハサミ。これも職人の手に合うように一点づつ手作りされたもので、それ専用の職人が作った道具です。

 

魅惑の釉薬

こちらは釉薬(ゆうやく)。この釉薬をさしていくことで、色鮮やかな模様が描かれるのです。この釉薬は、原料の調合から自分たちの窯元で作り上げます。窯元ごとに代々伝わる配合があるため、同じ赤でも窯元が違えば微妙に異なる色をしています。

また赤色は「赤透(あかすけ)」と呼ばれ、尾張七宝を代表する色なのですが、この赤透は作り上げるのが難しいのです。加藤さんの工房でも、赤透の発色が出せない時期が3年ほど続いたこともあるそうで、様々な試行錯誤を繰り返して、完成した色なのです。

 

釉薬を「さす」

こちらは釉薬をさしていくところ。銀線を立てたことにより、他の色が交じり合うことがなく、くっきりとした色分けが出来ていることが分かります。そして、そのままでは銀線の部分だけが、突出していますので、全体も銀線の高さまで、釉薬をさしていき、高さを均一にします。

また釉薬は焼き上げると、熱で縮小され、本来あるべき厚みを失います。その為、高さを均一にするためには、焼いては釉薬をさし、焼いては釉薬をさし、を繰り返していきます。ここでも、非常に手間がかかることが分かります。

 

釉薬をさす時に使用する道具もさまざま

こちらが実際に釉薬をさす時に使用する道具。米粒よりも小さい模様を描くときには、針のように鋭い棒を使用することもあります。ホセと呼ばれる右端の木の棒は、範囲が広い箇所の作業に使います。

 

精密な手さばき

こちらは加藤さんの手がける、現在制作途中の製品ですが、2つの製品が、まったく同じ模様をしています。桜の花びらの位置やバランスを合わせる為、とても精密な仕事が求められるのです。花瓶などの、ある程度大きさのある製品は、最終的にバランスをとったりできますが、こうした小物はそうはいきません。加藤さんの技術力の高さをうかがい知ることができます。

 

窯で焼き上げる

釉薬を付着させるために、窯で焼き上げます。尾張七宝は最低でも7回の焼きの作業が必要になるのです。銀や銅などの素地に、ベースの色を付着させてから完成に至るまで、何度も焼きあげます。

700度~900度の熱が出るのですが、各工程ではそれぞれ最適な温度を見極める必要があり、熟練の職人のなせる技です。尾張七宝において重要な工程の一つ。

 

研磨して綺麗に

最終的にダイヤモンドペーパーを使って、丁寧に研磨を行い、ピカピカにします。この工程を経て、凹凸が無くなり、手に吸い付くような手触りと、美しい輝きが現れます。

この研磨だけでも、10工程以上あり、粗さの違う何枚ものダイヤモンドペーパーを使い、粗い傷から、目には見えない非常に細かい傷にして、表面を滑らかにしていきます。研磨することによって、釉薬の質感も際立ってくるため、製品の価値を左右する、総仕上げといったところです。

 

鑑賞から道具へ

こちらは、ネイルに七宝をあしらったもの。職人いわく突貫工事とのことですが、それでも非常に精巧な模様が描かれています。もはやミリ単位の世界を超えて、マイクロ単位で作業をされています。

ネイルアートは単純に絵を描くだけですが、尾張七宝はそうはいきません。他の尾張七宝と同様の作業工程を経て、こちらも作られています。

まだ試作の段階で、現在も研究を続けているそうです。街中で尾張七宝ネイルをつけている女性の姿が、見られる日も遠くないかもしれません。

 

ここから生まれる尾張七宝

こちらは、当工房の一部分。昭和の時代から続く、加藤七宝製作所の歴史を感じることができます。ここで長年培われた尾張七宝の技をもって、加藤さんは常に新しい“七宝のカタチ”を探求していくのです。