三浦太鼓店

愛知県岡崎市にある、150年続く三浦太鼓店より、太鼓づくりの現場に密着します。150年前といえば、日本にまだ侍がいた時代。いくつもの動乱の時代を乗り越え、今なお三浦太鼓店が残り続ける、時代に合わせた魅力を発信し続けているからこそ。

 

時を超えて響き渡る太鼓の音

こちらは150年前、三浦太鼓店を始めた初代の写真。この時代に生きていた人は、現在だれもこの世に存在していませんが、この時代に響いていた太鼓の音は、現在においても聴くことができます。それは、三浦太鼓店がその音を、6代に渡って受け継いで守り続けているからこそ。

 

太鼓師「彌市」

三浦太鼓店には、「彌市(やいち)」という代々受け継がれる名前がある。これは、三浦太鼓店の初代三浦彌市さんの名前を、時の当主が名乗るようになっているのです。名前と共に、初代の誇りと技、太鼓の音も代々受け継がれているのです。

 

太鼓は一枚皮

こちらが太鼓に使われる皮で、写真の皮はウシ一頭分。左側が頭で、中央に縦線が入っている箇所は、背骨の跡です。太鼓の皮には、ツギハギした皮を使用することはありません。ちなみにこちらの皮、乾燥させてある状態なので、非常に硬いです。

 

太鼓の面

先ほどの牛の皮を太鼓の形に加工すると、このようになります。しっかりと背骨の跡が残っている事が分かります。

 

皮をふやかす

乾燥した皮はそのままでは硬すぎて加工ができないため、水分を含ませて、柔らかくする必要があります。水分を含ませれば、皮が柔らかな質感を取り戻します。

 

皮をほぐす

乾燥していた皮を水で戻しただけでは、完全に伸び切った状態にはなりません。そのため、こうしてほぐしてあげ、皮を伸ばしてあげる必要がある。併せて、余分な脂分をそぎ落とす効果もあるのです。

 

0.1ミリ単位の作業、皮を削る

皮を伸ばした後は、表面を0.1ミリ単位で削っていきます。とても繊細な作業ですが、非常に重要な作業。太鼓の音は皮でも大きく左右されるため、ここを失敗すると想像とはまったく違う音になってしまいます。職人の頭の中では、この時点で完成時の音のイメージが出来上がっているのです。

また冬でも外に出て、水を使った作業になるためその寒さは厳しい。繊細な手の感覚を必要とするため、手を熱湯で温めながら仕事をします。

 

胴に皮を張る

準備が出来た皮を、胴に張っていく、通称「クダ付け」と呼ばれる作業。皮を張るには皮にロープを掛けて引っ張るのですが、まずはそのロープを掛ける箇所を作る為に、慎重に皮に切れ込みを入れていきます。

作った切れ込みに、木の棒(クダ)を差し込んでいきます。非常に力が必要となる作業。

等間隔に差し込んでいくと、この通り。ちなみに、太鼓の耳と呼ばれる部分は、こうしたクダ付けの作業の名残なんです。

次は大きな縫い針を使って、更にしっかりとクダ(木の棒)を固定していきます。これはクダが引っ張られた時に、皮が破れないように補強する意味もあるので、非常に重要。

クダ(木の棒)にロープを掛け、下に引っ張るように、張っていきます。

全てのクダ(木の棒)にロープを張り、しっかりと皮を引っ張りながら固定していきます。

そして、更に強い力をかける為、ロープにバチをさし、ねじってテンションをかけていきます。クダが斜めになったりしないよう、全体のバランスをみつつ、慎重な作業が求められます。もしクダが斜めの状態で固定されてしまうと、皮の耳の部分が不恰好になり、非常に格好悪いのです。

和太鼓作りで、有名な工程でもり、絶対に欠かすことのできない工程「皮踏み」。和太鼓は叩いていくと皮が伸びていき、音が低くなっていきますので、完成後に皮が伸びてしまうのを少しでも抑えるため、この段階でしっかりと皮を伸ばす必要があります。

いよいよ油圧ジャッキで力を加えていきます。油圧ジャッキで太鼓を持ち上げつつ、数トンにもおよぶ力で皮を引っ張ります。

皮の表面に水滴がついています。これは湿った皮が極限まで引っ張られて、まるで皮を絞ったかのように、水が浸み出てきているんです。とてつもない力が加わったことが分かります。

極限まで引っ張り、固定した後はゆっくり乾燥させていきます。ここまでが、いわゆる「仮張り」と呼ばれる、太鼓に合わせて型を作る作業。乾燥後は「本張り」といって、実際に皮を張り、再度皮踏みを行い、鋲(びょう)を打ち、装飾品をつけて完成となります。

新しい太鼓の皮は叩いていくうちに伸びていくので、本張りをする時にちょうど良い音が出るよう、伸びを予測して張っていかなければなりません。経験と感覚が重要となります。

 

作業途中の太鼓達

作業途中の太鼓達がずらりと並んでいます。三浦太鼓店では、太鼓の修理、皮の張り替えも行っていますので、修繕などの依頼も多い。仮張りを終えて、乾燥した皮も次の工程を待っています。

 

伝統の音を守る和太鼓

和太鼓づくりの現場に密着することで、職人の「音」への情熱とこだわりが伝わります。一つ一つの作業にはそれぞれ意味があり、お客様が求める「音」を再現するために、五感を研ぎ澄まして仕事をされている姿は、まさに職人。和太鼓の響きは未来に残していきたい音色です。