プロフィール

名前  三浦和也(六代目彌市)
年齢  34歳
職人歴 15年

「伝統を守り、伝統を創る。
和太鼓の音は人々の心を打つ」

150年の歴史を背負い、三浦太鼓店の6代目として伝統の音は守りながらも、現代に合った新しい和太鼓の開発に余念がない。

そして、自らも演奏者として、これからの和太鼓の第一線を走り続ける太鼓師。

 

職人インタビュー

 

Q1.「彌市・やいち」という名前が持つ意味

本名は三浦和也様でよろしいでしょうか。
名刺にも記載されている「彌市」というのは、名前の一部なのでしょうか。

「彌市」というのは、三浦太鼓店の創業者の名前で、三浦太鼓店の当主に代々受け継がれる名前なんです。私は6代目の彌市になりますが、父は5代目彌市、おじいさんは4代目彌市なんです。

太鼓師「彌市」として、太鼓づくりの伝統を引き継いでいるのです。

それは面白い風習ですね。
アメリカでも父親の名前を引き継いだりすることはありますが、それは本名です。日本には職人としての名前を受け継ぐ文化があるんですね。

そうですね。
日本では歌舞伎の世界でも見られる世襲という習慣です。

太鼓の内側には、作った時、修理した時に年号や太鼓師の名前を残すことが一般的なんです。その時は本名ではなく、太鼓師「彌市」として名前を刻みます。そうすると、どこの職人が手を入れたものかが分かるんです。

代々受け継がれた名前であり、お店の代名詞、看板という訳ですね。
歴史を感じて素敵だと思います。

 

Q2.老舗企業となるために

三浦和也さんで6代目ということですが、三浦太鼓店は何年ぐらい続いているんでしょうか。

創業者は慶応元年(1865年)に三浦太鼓店を始めました。
来年で150年目になります。

とてつもない年月ですね!
150年も続いている企業なんて、アメリカにはそうそうありません。

日本では150年以上続く企業が1万社、200年以上続く企業は3千社あると云われています。

企業が長くやっていくには、時代の変化にうまく対応することが必要だと思っています。特にここ数十年は生活様式の変化が著しいですから。

たしかに、日本でも欧米風のライフスタイルを取り入れることが多くなりましたね。

和太鼓というモノは、もともと神社仏閣でお祭りや神事で使用されるものなんです。

そして、私はこれ以上その市場が大きくなることは無いと思っています。新しい市場、新しいターゲットにむけて、新しい太鼓づくりに挑戦していくことが必要です

三浦さんは、これからどんなところに需要が広がるとお考えですか。

現在も積極的に取り組んでいるんですが、太鼓には演奏という魅力もあります。

10年ほど前からは、和太鼓演奏を趣味の一つとする人も現れているんです。和太鼓の響きは聴く人の心を打ちますから。

カッコいい趣味だと思います!
先程和太鼓の音を聴かせていただきましたが、本当に心に響きますね。生演奏を聴いたのは生まれて初めてでしたが、テレビなどで聴く太鼓の音とは全く違いました。

演奏にはどうゆう音が求められているかなどは、自分たちも実際に演奏することで分かることがあるんです。

伝統を守り、伝統を創ることが、私たちの理念でもありますので、いろんな事に挑戦していきます。

 

Q3.伝統を守るということ

伝統を守りながら、伝統を創るというのは、大変興味深いお言葉だと思います。

新しいものを創りあげ、カタチを変えすぎてしまうことで、それはもはや伝統を受け継いだものではないという考えもありますよね。

私達にとって伝統を守るということは、太鼓師「彌市」としての太鼓の響き、その音を守るということだと考えています。

三浦太鼓店に代々伝わる、その音だけは、絶対に曲げることはできません。その音は一般の人には聞き分けが出来ないかもしれませんが。

三浦太鼓店の音を守っているから、どんな装飾を施そうとも、形を変えようとも、それは三浦太鼓店の太鼓であり、太鼓師「彌市」の手がける太鼓になるんです。

芯となる太鼓の音が受け継がれているからこそ、形を変えても伝統を受け継いでいくことが出来るんですね。

先程見せていただいた、演奏用の太鼓は装飾も鮮やかで、とっても素敵でした。

近年では女性がしとやかに叩けるような太鼓も開発しています。
いろんな挑戦を重ねて、次は200年続く企業を目指していきます。

 

Q4.太鼓はコミュニケーションツール

和太鼓の魅力とは、どのようなところでしょうか。

そうですね…
和太鼓の響きには、メッセージ性があるんです。

地域で行われる神事であれば、そこでしか求められていない音があるんです。神様に捧げる音といいますか。

人の心を操る力も持っているんです。
戦闘の前に太鼓を打って鼓舞したり、祭りで鳴らす太鼓にだって、人々をコントロールする意味があるんです。

和太鼓の音には、とてつもない力が秘められているんですね!
神事ではなく、趣味等で使用する演奏者の方も、同じなのでしょうか。

演奏という意味で言えば、演奏者が伝えたいことによって、音を変えていく必要があります。

まだまだ発展途上で、模索している部分が多いですが、メッセージ性という意味でも、和太鼓の音はそれぞれなんです。

 

Q5.伝統の価値

500年以上も前に作られた太鼓を修理することもあるそうですが、それを修理できる腕を持っていることも、素晴らしいと感じます。

今になっても修理ができるのは、その技術が代々受け継がれているからなんですね。

一度でも伝承されずに途絶えてしまった技術は、どれだけお金を積んでも再現することができませんから。

そうなんですね。
技術が受け継がれているからこそ、たとえ500年前の太鼓だとしても、修理をすることができるというわけですね。

その通りです。
積み重ねられてきた歴史の中にある価値は、物づくりの本質であり、職人としての財産です。

それは無くしてはいけないものであり、残していく為にも、やはり変わっていくことが必要だと思っています。

 

Q6.海外での反響

私は今日まで、和太鼓の生演奏は聴いたことがありませんでしたが、海外からも需要はあるのでしょうか。

毎年アメリカでは太鼓カンファレンスという催しも開催されていますし、サンフランシスコには太鼓道場なるものもあります。
来年の太鼓カンファレンスには、私も誘われているんです。

世界各国でも、和太鼓に関するイベントはたくさん開かれているんです。

そうなんですか。
アメリカは歴史が浅い国ですから、このような伝統を感じるものはとてもカッコいいです。

イベントだけではなく、ロシアやオーストラリアの国々から、和太鼓の注文もあるんですよ。

アメリカ人の方も、実際に演奏するプレイヤーがいます。
40、50年も前に、日本人が海外に渡ってから徐々に太鼓が広まったようで、現在では世界規模で和太鼓が親しまれています。

三浦さんも手掛ける、日本の和太鼓文化が世界に広まっていくのは素敵なことですね。

 

職人 Times をご覧の皆様へメッセージをお願いします

自分に与えられた使命は伝統文化の継承と、和太鼓の本質である“活きた音”を守りながら、新たな時代に求められる“音作り”をすることだと強く感じています。

本当の意味で伝統を守るという事は“守るために変わり続ける”事だと思っています

これから私が生み出す太鼓が、100年後、 200年後に“伝統”と呼ばれるような、そんな太鼓を創るのが今の私の夢です!